「年のせい」とされがちな、動作の遅さと歩きにくさ
歩き出しの一歩が出ない、歩幅が狭くなった、動作全体が遅くなった。こうした変化は加齢によるものと片づけられがちですが、その背景に治療で改善する病気が隠れていることがあります。当院では脳神経内科専門医が、動作の遅さの原因を診察と検査で見極めます
こんな症状はありませんか?
- 歩き出しの一歩が出にくい、歩き始めに足が床に貼りついたように感じる
- 歩幅が狭くなり、すり足になってきた
- 歩くときに片方の腕の振りが少なくなった
- 着替え、ボタンかけ、寝返りなど、動作全体に時間がかかるようになった
ご本人よりも、ご家族が先に気づくことが多い症状です。「最近、歩き方が変わった」と感じた方からのご相談も歓迎します。
「動作が遅い」とはどういうことか
医学的には動作緩慢と呼びます。単に速度が遅いだけでなく、動作を繰り返すうちに、動きがだんだん小さくなっていくのが特徴です。
たとえば指を繰り返し打ちつけてもらうと、はじめは大きく動いていたものが、次第に小さく、遅くなっていきます。この変化は、診察室で数十秒あれば確認できます。
加齢による動作の衰えとの違いは、ここにあります。加齢では動きは全体的にゆっくりになりますが、繰り返すうちに小さくなっていくという特徴は生じません。また、加齢による変化は左右対称に進みますが、パーキンソン病では片側から始まることがほとんどです。
「片方の手だけ動かしにくい」「片方の腕だけ振れていない」という左右差は、重要な手がかりです。
パーキンソン病の主な症状
- 動作緩慢:動きが遅く小さくなる。診断の中心となる症状です
- 筋強剛(固縮):関節を他人が動かすと、一定の抵抗を感じる。ご本人は「こわばり」「重さ」として自覚することがあります
- 安静時振戦:じっとしているときに手足が震え、動かすと軽くなる。震えのない方も少なくありません
- 姿勢保持障害:バランスを崩したときに立て直しにくい。発症からある程度経過してから現れる症状で、初期にはみられません
運動症状より前に現れることがある変化
パーキンソン病では、歩きにくさや動作の遅さが出るより何年も前から、次のような変化がみられることがあります。
- においがわかりにくくなった
- 便秘が続くようになった
- 睡眠中に大きな寝言を言う、叫ぶ、手足を動かす、隣で寝ている人を叩いてしまう(レム睡眠行動障害)
- 気分の落ち込みが続く
- 字が小さくなった、書いているうちに文字がだんだん小さくなる
とくに睡眠中の異常行動は、ご本人には自覚がなく、ご家族が気づかれることがほとんどです。心当たりのある方は、診察の際にお伝えください。
これらの変化があっても、必ずパーキンソン病になるわけではありません。ただし、経過を見ていくうえで重要な情報になります。
似た症状をきたす、別の病気
動作の遅さや歩きにくさは、パーキンソン病以外の原因でも起こります。なかには、原因を取り除くことで改善するものがあります。
薬剤性パーキンソニズム
- 原因:一部の胃腸薬・制吐薬(スルピリド、メトクロプラミドなど)、抗精神病薬、めまいに用いられる薬など
- 特徴:服薬開始からしばらくして症状が出る。左右差が乏しいことが多い。原因となる薬を調整することで改善が期待できます
他院で処方されているお薬も含め、お薬手帳を必ずご持参ください。
特発性正常圧水頭症
- 原因:脳を満たす髄液の流れが滞り、脳が圧迫される
- 特徴:歩幅が狭く足が開き気味の歩行、物忘れ、尿が近い・間に合わないの3つが揃うことがある。手術で改善が期待できる病気です
脳血管性パーキンソニズム
- 原因:小さな脳梗塞の積み重ね
- 特徴:下半身に症状が強く、上半身は比較的保たれる
本態性振戦
- 原因:はっきりした原因のない、震えを主症状とする病態
- 特徴:じっとしているときではなく、コップを持つ・字を書くなど動作時に震える。動作緩慢は伴わない
頚髄症・腰部脊柱管狭窄症
- 原因:頚椎・腰椎の変形による脊髄や神経の圧迫
- 特徴:歩きにくさは似ていますが、しびれや足のつっぱり感を伴います
当院で行う評価
- 問診:症状の始まり方、左右差、経過、日常生活での困りごとをうかがいます
- 神経学的診察:指や足の反復運動、筋の緊張、姿勢と歩行の観察、腕の振りの左右差
- MRI検査:正常圧水頭症、脳梗塞、脊椎疾患など、別の原因を見分けるために行います
- 血液検査:甲状腺機能など、動作の遅さをきたす他の原因の検索
- 服用中のお薬の確認:薬剤性を見分けるうえで欠かせません。お薬手帳をご持参ください
治療と、これからの通い方
治療の中心は薬物療法です。不足した神経伝達物質を補う薬を、症状と生活に合わせて調整していきます。多くの方で、動作の遅さや歩きにくさの改善が期待できます。
同時に、運動療法が重要な役割を果たします。歩幅を意識して大きく歩く、大きな動作を繰り返すといった運動は、パーキンソン病の症状に対して有効性が示されています。当院にはリハビリテーション室と理学療法士が常勤しており、診断から運動療法まで同じ院内で継続できます。
すでに診断を受けて他院に通院中の方の、お近くでの継続的な診療についてもご相談いただけます。通院の負担を減らしたい、専門的な相談先を近くに持ちたいという方は、一度ご相談ください。
診療のご案内
脳神経内科外来は毎週水曜日の診療です。予約制ですので、Web予約またはお電話でご相談ください。お薬手帳を必ずご持参ください。
歩行に不安のある方も来院しやすいよう、当院は笹塚駅徒歩1分・ビル1階にございます。ご家族の同席も歓迎します。
【監修】医師 津田 浩史(神経内科指導医・専門医/総合内科専門医)
東北大学医学部 脳神経内科 客員教授/東邦大学医学部 脳神経内科 客員教授/順天堂大学医学部 脳神経内科 非常勤講師