足首・足の痛み

足首・足の痛みについて

日常生活からスポーツ場面まで、足関節や足部には大きな負荷がかかります。痛みが続く場合、症状や原因が複雑に絡み合っているケースが少なくありません。MRIを用いることで、軟部組織や骨、腱・靭帯の微細な病変を正確に把握し、適切な治療方針を素早く立てることが可能です。本ページでは、成人に多くみられる足関節・足部の代表的な疾患と、MRIを活用した診断・治療のポイントについてご紹介します。

足底腱膜炎(Plantar Fasciitis)

原因・症状

足底腱膜への過度の負荷や繰り返しのストレスにより炎症が生じる疾患です。かかとの内側から足底中央部にかけて強い痛みが走り、とくに朝起きて歩き始めるときの痛みが特徴的です。長時間の立ち仕事や肥満、アーチ低下(扁平足)がリスク因子となります。

MRIによる診断

X線では骨棘の有無を確認できますが、MRIでは足底腱膜の肥厚や炎症部位、周囲の軟部組織の状態を正確に把握できます。これにより、保存療法か、あるいは他の併発病変の確認を含めた治療方針を決定しやすくなります。

治療のポイント

装具やインソールによるアーチサポート、ストレッチ・足底筋トレーニング、体重管理などが中心です。炎症が強い場合は局所注射や物理療法を検討することもあります。

後脛骨筋腱機能不全(Posterior Tibial Tendon Dysfunction:PTTD)

原因・症状

足部内側の土踏まずを支える後脛骨筋腱が損傷し、成人期以降に起こる扁平足変形の代表的原因です。中高年の女性に多く、足部内側痛やアーチの低下、進行すると足関節外側の痛みや変形が目立つようになります。

MRIによる診断

後脛骨筋腱の変性や部分断裂、腱周囲の浮腫などをMRIで明瞭に捉えられます。腱の損傷度合いや周囲組織の炎症の程度を確認することで、装具療法を含み最適な治療プランを選択できます。

治療のポイント

軽度から中等度であれば補高や足底板などの装具療法や運動療法が有効です。

外反母趾(Hallux Valgus)

原因・症状

母趾(足の親指)が外反し、中足趾節関節(MTP関節)が内側へ突出する変形です。ハイヒールや先の細い靴を長期間履くことが一因とされ、女性に多くみられます。変形が進行すると痛みは増し、他の趾にも負担がかかります。

MRIによる診断

変形の程度や関節軟骨・種子骨の状態、周囲の軟部組織の炎症を詳細に評価するのに役立ちます。骨棘や滑液包炎など、痛みの原因となっている病変の同定が容易になります。

治療のポイント

進行度に応じて、足趾体操や装具、インソールなどの保存療法を行います。変形や痛みが著しい場合は骨切り術など手術的矯正が選択肢になります。

変形性足関節症(Ankle Osteoarthritis)

原因・症状

加齢や外傷後(捻挫や骨折)に二次性に起こることが多く、軟骨の摩耗により関節痛・可動域制限を生じます。進行すると変形が顕著になり、安静時の痛みや歩行困難を伴う場合もあります。

MRIによる診断

軟骨の摩耗度合い、骨髄浮腫、滑膜炎など、X線では捉えにくい軟部組織の状態を正確に把握できます。

治療のポイント

初期から中期はMRI所見を基に足底板や装具、リハビリなどの保存療法が中心となります。痛みが強い場合は関節鏡視下手術や骨切り術、最終的には人工関節置換術が考慮されます。

アキレス腱炎(Achilles Tendinitis)

ジョギングやランニングなど、繰り返し足首を使うスポーツに多くみられる腱障害です。中年以降の方でも日常的に歩行距離が長いなど、負担が蓄積すると発症しやすくなります。アキレス腱や踵骨付着部付近に痛みや腫れが生じます。

MRIによる診断

腱の肥厚、部分断裂、周囲の炎症状態を可視化できて正確な損傷や炎症の部位や程度を同定できます。これを基に適切なリハビリの判断材料となります。

治療のポイント

MRI検査の結果に基づき、適切な安静機関を決定し、修復を促すリハビリテーションや装具やインソールが有効です。

モートン神経腫(Morton’s Neuroma)

中足骨間(とくに第3~4趾間)の足底神経が慢性的に圧迫・刺激され、神経鞘が肥厚することで強い痛みやしびれを生じる疾患です。締め付けの強い靴やハイヒールなどがリスク要因です。

MRIによる診断

神経腫の大きさ、周辺組織との関係を明確に把握できます。エコーでも診断可能な場合がありますが、MRIの方がより詳細な断面情報を得られます。

治療のポイント

靴の調整や足底板、ステロイド注射などを行い、症状が強い場合は外科的摘出が検討されます。神経腫の正確な位置を把握することで、必要最小限の手術で除去できる可能性が高まります。

拇趾種子骨障害

原因・症状

拇趾MTP関節の足底側に存在する種子骨(ふたつあることが多い)の炎症や変性、骨折などが原因で痛みが生じる障害です。外反母趾や足底圧の不均衡、長時間の立ち仕事などがリスク因子となります。痛みは拇趾の付け根の足底側に集中し、歩行時に強く感じられることが多いです。

MRIによる診断

種子骨の骨折や炎症の有無、隣接する腱の状態、滑液包炎の合併などを詳細に評価できます。X線で捉えられない軽微な骨挫傷や軟部変化も把握可能で、ピンポイントでの病変特定に有用です。

治療のポイント

足底板やパッドなどを用いた免荷(痛みのある部位に体重がかかりすぎないようにする)やリハビリが基本です。MRIで精密に評価することで、適切な治療を行うことはできます。

MRIによる正確な診断とピンポイント治療の重要性

足関節や足部の痛みは、単一の原因だけでなく複数の因子が絡み合っている場合がよくあります。MRI検査では、軟部組織・骨・関節・腱・靭帯・神経などを多角的に評価できるため、痛みの本質的な原因を特定しやすく、症状に合わせたピンポイント治療が可能です。