関節炎

関節炎について

🔎 関節炎は、加齢や過労だけでなく、免疫の異常や感染、結晶の沈着など、さまざまな要因によって関節に炎症が起こる疾患です。肩・膝・手・足・背骨など、どの部位にも起こりうるため、症状だけで自己判断するのは危険です。当院では、痛みの部位や発症時期、動作時の状態などを丁寧にヒアリングし、X線・超音波・MRIなどの画像診断を組み合わせて、病態を正確に把握したうえで、根本からの改善を目指した治療を行っています。

炎症性関節炎

炎症性関節炎は、自己免疫の異常により関節が攻撃され、慢性的に炎症が続く病気です。主な特徴は、関節の腫れ、熱感、安静時の痛み、朝のこわばりなどで、複数の関節に同時に起こることが多いです。早期に治療を開始しないと関節の破壊が進行し、日常生活に大きな支障をきたす恐れがあります。

👐 リウマチ性関節炎(RA)

🕐 朝起きたときに手の指や手首が1時間以上こわばる場合は、リウマチの可能性があります。特に30〜50代の女性に多く、左右対称に小さな関節が腫れ、進行すると関節の変形や脱臼に至ることもあります。
🔬 診断には血液検査(RF、抗CCP抗体など)と画像診断が重要です。MRIでは初期の骨びらんや滑膜の炎症を早期にとらえることができ、治療開始のタイミングを逃しません。
💊 治療は、メトトレキサートなどの抗リウマチ薬(DMARDs)や、生物学的製剤による免疫調整が中心となります。

🦴 脊椎関節炎・乾癬性関節炎・反応性関節炎(SpA)

🌙 朝に腰やお尻の痛みが強く、動かすとやや改善する場合は、脊椎関節炎の可能性があります。特に若年男性に多く、仙腸関節や脊椎に慢性的な炎症が起こります。乾癬、潰瘍性大腸炎、結膜炎などを伴うこともあり、全身性の評価が必要です。
🔍 MRIは、X線で異常が見られない初期でも骨髄浮腫などの炎症所見をとらえることができ、早期発見に非常に有用です。
💊 治療はNSAIDs、抗TNFα抗体などの生物学的製剤が効果的です。

🧒 若年性特発性関節炎(JIA)

🧒 16歳未満の子どもに発症する慢性関節炎で、持続的な関節の腫れや痛みが見られます。発熱や皮疹、眼の炎症を伴う場合もあり、タイプによって経過が異なります。
🔍 小児では自己申告が難しいため、超音波やMRIによる関節の炎症評価が診断の助けになります。
💊 治療には、NSAIDsやDMARDs、生物学的製剤を用いることがあります。成長や生活に影響しないよう、定期的なフォローが必要です。

小児の一過性関節炎(単純性股関節炎)

🧍‍♂️ 3〜10歳くらいの子どもが、ある日突然「足を引きずる」「股関節を動かすと痛がる」「じっとしていると楽そうにしている」などの症状を訴える場合、単純性関節炎(transient synovitis)であることがよくあります。特に男児に多く、ウイルス感染後などに続発するケースも見られます。
🕵️‍♂️ X線や血液検査では異常が出にくいため、MRIや超音波で股関節周囲の滑膜炎や関節液の貯留を確認することが診断の手がかりになります。MRIは骨髄炎やJIAなど重篤な疾患との鑑別にも役立ちます。
🛌 安静と経過観察が基本で、ほとんどの場合は1〜2週間で自然に回復します。ただし、痛みが長引く場合や熱を伴う場合は、他の疾患(化膿性関節炎など)を除外する必要があります。

変性関節炎(非炎症性)

👣 長年の使用や加齢に伴い、軟骨がすり減って骨同士がこすれ、関節の痛みや変形が生じる状態です。変性関節症とも呼ばれます。歩行や階段昇降時の痛み、立ち上がり時の違和感、こわばりなどが主な症状です。

🚶‍♂️ 変形性関節症(OA)

🦵 中高年以降に多く、特に膝や股関節、指の関節に発症しやすいです。炎症が中心ではないものの、関節周囲の滑膜が腫れることもあり、進行すると変形や歩行困難を伴います。
📷 X線では関節裂隙の狭小化や骨棘(とげ)形成を確認できますが、MRIでは軟骨の損傷や骨内の浮腫を早期に捉えることが可能です。
💊 保存療法としての運動療法や装具の使用、必要に応じてヒアルロン酸注射や関節鏡視下手術が検討されます。

結晶性関節炎

⚡ 関節内に尿酸やカルシウムの結晶が沈着し、急性の激しい炎症発作を引き起こすタイプの関節炎です。急な痛みや赤く腫れた関節が特徴で、誤って細菌感染と診断されることもあります。

🍺 痛風

🍖 食べ過ぎ・飲み過ぎ、ストレス、脱水などを契機に発作が起こり、足の親指の付け根に突然激しい痛みが現れることが典型です。
🧪 血液検査で高尿酸血症が確認され、関節液検査で尿酸結晶が見つかれば確定診断となります。
💊 急性期はNSAIDsやコルヒチン、ステロイドで炎症を抑え、再発予防にはアロプリノールなどの尿酸降下薬を使用します。

❄️ 偽痛風(CPPD)

🦵 高齢者に多く、膝や手首、肩関節などにカルシウムピロリン酸結晶が沈着して炎症を起こします。痛風と似た症状ですが、尿酸値は正常です。
📷 X線やMRIでは関節内石灰化や軟骨下の骨変化を評価でき、正確な診断に役立ちます。
💊 治療はNSAIDs、一時的なステロイド投与などが行われます。

化膿性関節炎

🔥 小児や高齢者、関節リウマチや糖尿病のある方に発症しやすく、命にかかわることもあるため早急な治療が必要です。
🔍 診断には関節穿刺による関節液の検査と、MRIでの関節内膿瘍や滑膜炎の評価が有効です。
💊 抗菌薬の静脈投与と関節内の洗浄・ドレナージが行われます。

正確な診断が関節炎治療の第一歩

🔍 関節炎は同じような症状を呈しても原因が全く異なることが多く、誤診や治療の遅れが関節機能の低下につながります。当院では、X線・MRI・超音波を駆使し、病態を明確にすることで、薬物治療、注射、運動療法、装具などを最適に組み合わせた治療を提供しています。